
「広い空間も温度差のない、心地いいあたたかさに」で紹介したMさんご一家は、東京・国立駅からほど近い、ゆったりとした住宅街の一角に家を新築しました。冬はソーラーシステムを使って部屋をあたためています。
この住まいの温熱環境を心地よくする仕組みには、あたたまると軽くなって上がり、冷えると重くなって下りるという、空気の性質を利用しています。
冬は、屋根に設置したソーラーシステムであたためた空気 (外気温 + 35℃以上) を床下に送り込む方法。屋外の寒さの影響を受けやすい窓前の床に吹出し口を設けて、あたたかい空気を室内に取り込みます。また、夜間と雨や曇り空で太陽の熱が期待できないときの補助暖房として、給湯器であたためた温水で温風をつくって出すファンコンベクターを床下に設置しました。
いずれの場合も1階の床下からの暖気のみで、2階に暖房設備はありません。1階のあたたかい空気がリビングや階段の吹抜けを介して上っていきます。「外から帰ってきたときに家の中のあたたかさを実感します。素足でも平気ですし、ことさら厚着することもありません」 (ご主人)。
イラスト解説
[冬1- 晴天] 太陽の熱によって屋根であたためられた空気をパッシブソーラーシステムのダクトで1階床下に送り、床に設けた吹出し口から室内に取り込む仕組み。床の表面温度も上がる。暖気は2カ所の吹抜け (リビングと玄関) と階段室を通じて上がり、家中をあたためる。
写真はロフト階。右の扉奥の屋根裏にはエアコンを、左の扉奥にはパッシブソーラーシステムの機器を設置しています。扉に開けられた穴からは空気が行き来します。
玄関から階段下を活用した収納の床下に、ファンコンベクターを設置しています。手前には制振ダンパーが見えます。
さらにうれしいことに、電気代も年間を通じてあまりかかっていません。2019年2月の一般的な家庭の平均電気代は約 14000円(総務省 統計局 家計調査)で すが、M邸は6812円(使用電力231kW)という省エネぶり。ガス代は別ですが、ファンコンベクターはほとんど使わなかったそうです。