
睡眠、食事、休息、家事、家族とのコミュニケーションなど、住まいの中での行為は多様ですが、新型コロナウイルスの感染拡大による在宅勤務(リモートワーク)の普及で、ここに「仕事」が加わるようになりました。
前回の記事で、在宅勤務によって、多くの人の仕事と家族と自分の時間のバランスが変化していることをお伝えしました。それでは、在宅勤務をしている方は、「仕事、家族、自分、社会の気持ちの配分」をどう捉えているのでしょうか。快適空間研究所では、在宅勤務が急速に広がってから約1年経った2021年3月、在宅勤務をしている方を対象に、「気持ちの配分の理想と現状」について、調査(*1)を実施しました。
自身の気持ち(仕事・家族・自分・社会)の配分には、現状と理想にギャップあり
在宅勤務をしている方に対して、「仕事のこと」「家族・家庭のこと」「自分のためのこと」「社会・地域のこと」への気持ちの配分について聞きました。(合計が10となるように、それぞれの内容に対して、自身の気持ちの配分を1から10の整数で割り当ててもらいました。)
理想の気持ちの配分、および、現状の気持ちの配分の平均値についてみてみると、理想と現状にギャップがあることがわかりました。
●理想の気持ちの配分の平均は、
「仕事」:「家族・家庭」:「自分」:「社会・地域」=3.2:3.7:2.5:0.6
●現状の気持ちの配分の平均は、
「仕事」:「家族・家庭」:「自分」:「社会・地域」=4.0:3.5:2.1:0.4
という結果になりました。
「仕事のこと」では現状の気持ちの配分は理想より高く、「家族・家庭のこと」、「自分のためのこと」、「社会・地域のこと」では、現状の気持ちの配分は理想より低い、という結果となりました。理想は仕事への気持ちの比重をもう少し少なくしたいということがわかります。
平均でみてみると、理想は仕事への気持ちの比重をもう少し少なくしたいと考えている方が多いようですね。
また、詳細グラフは割愛しますが、回答者の数値の分布を別途確認したところ、理想とする「家族・家庭のこと」への気持ちの配分は、回答者によるバラつきが最も多くなっています。理想とする「家族・家庭のこと」の気持ちの配分には、人によって大きな違いがあることがわかりました。
男女の気持ち(仕事・家族・自分・社会)の配分に、ギャップあり
男女別に結果をみてみましょう。
現状の「家族・家庭のこと」への気持ちの配分は、女性の方が男性よりも高くなっており、女性の理想は「仕事のこと」「家族・家庭のこと」を減らし、「自分のためのこと」への配分を増やしたいと考えているようです。
一方で男性は、女性よりも現状の「家族・家庭のこと」が低くなっており、理想としては「仕事のこと」を減らし、「家族・家庭のこと」「自分のためのこと」を増やしたいと考えているようです。
調査前の予測としては、在宅勤務者は、通勤時間や身支度時間などがなくなり、それに関するストレスが減った分、時間を有効活用できるようになり、気持ちの配分も理想と現実が近づいているのでは、と想定しました。しかし、調査結果をみてみると、実際のところは、理想と現状にギャップがあり、仕事の配分を減らしたいと考えているようでした。