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快適な家を作るには、体感して理解することが必要。ネオマの家と展示棟はそのための施設

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快適な家を作るには、体感して理解することが必要。ネオマの家と展示棟はそのための施設

「ネオマの家」開設1周年企画:つくり手たちが語る。知って欲しい、「あたたかい住まい」が実現した心地よさとその理由 vol.6

「ネオマの家 IBARAKI SAKAI モデル」が完成して1年が経ちました。「ネオマの家」が目指した温熱環境と心地よさの検証をすべく、このプロジェクトに関わっていただいたみなさんに集まっていただき、設計・施工を振り返りながら、実現できた「あたたかい住まい」の魅力とこれからを語っていただきました。

前回までの対談はこちら。

あたたかさの幅、個人差のある感じ方

大塚—-温熱環境の設計に関しては、経験と勘に頼っているところが、まだどうしてもあるので、さらによいものをつくれるように努力したいですね。湿度、風量などどうしたらもっと快適になるか、今、取っているデータを解析して今後に生かしたいと考えています。

高橋—-私はこれまでエネルギー消費量を減らすことを主眼にやってきたんですが、快適さを重視するとこういうかたち(ネオマの家)になるのかなと思います。温度ムラとか気流とか、とても勉強になりました。そういうところを来た方にもっと伝えられるといいですね。というのも、ここを見た方の中には、「もっと南面の窓を大きくすればよかったのに」とか「寒い感じがした」とか、こちらの意図をわからずに帰られてしまう方がいるので、この家の狙いをしっかり伝える必要も感じました。

白石—-たぶん期待値が違うんですよね。エアコンを23℃〜25℃設定の連続運転にすればかなりあたたかい室温にできるのですが、あえて20℃〜22℃設定くらいでできるだけエネルギーを使わずに温度差のない環境をつくっています。でも、それでは不満(寒い)という方もいるのでしょう。

高橋—-私もそうだったんですが、考えがそこまで及ばないというか。あたたかければいい、というところで考えが止まっている人も多いのだと思います。ずっといて心地よい、だからこの温度なのですよね。

白石—-私たちとしては、もともと「暑くも寒くもない状態」をつくろうとしているわけなんです。その状態が快適という解釈です。でも、あたたかいという感覚は、人によってかなりの幅がある。だからこそ、ここは、「その人その人の心地よさを探る器」でもあることを知ってもらう必要もあるのかもしれません。

大塚—-そもそも100%の人が満足ということはありえない。5%くらいの方々はどうにもなりません。だからこそ、その5%の方々にも合わせられるように室温のベースをきちんとつくっておいて、簡単に調整できることが大切だと思います

高橋—-これだけ外皮性能(*1)がきちんとあれば、冷暖房機の操作によって好みのあたたかさにコントロールすればいい。この家は簡単にコントロールできますよね。それを説明できればいい。

白石—-「あたたかい暮らし」の意味というのが、単純に温度が高いということではなくて、「温度ムラがない」ことであるとか、「一日中温度変化がない」ことであるとか、これまでに経験したことがない価値なので、そういう新しい価値をきちんと伝えていく努力をしなければいけないと思っています。これだけ断熱性能を高めれば、コントロールもしやすいし、経済的にも冬で電気代が一日140円くらいに抑えられる。これまで考えられなかった経済性でもありますし、そういうことも含めて、隣の展示棟できちんと説明した上で体感していただいたほうがいいですね。

リビングで「ネオマの家」の気流データをみんなでチェック。
リビングで「ネオマの家」の気流データをみんなでチェック。
*1 外皮性能:外皮とは、住宅の室内と室外を熱的に分ける境界(屋根、天井、壁、開口部、床、土間床、基礎など)の断熱性能のこと。いわゆるUA値のことで、建物の断熱性能を表す指標。小さければ小さいほど性能が良いということ。

展示棟で仕組みを理解、体験棟であたたかさを体感

白石—-この1年でたくさんの工務店さんにお越しいただいて、このあたたかさを体感していただきました。体験棟である「ネオマの家」の隣には、当社の断熱材「ネオマフォーム」と共に断熱の仕組みを理解してもらうための展示棟も用意しています。どういう意図でどうやって建てたかを理解してもらった上で体感していただくためです。この施設を活用いただいた効果はどうでしたか。

御前—-一緒に宿泊体験した施主からは、断熱材を厚くするリクエストがありました(笑)。施主には断熱についての話はしているのですが、やはり、説明するだけではなかなか理解できないのですよね。来て見て体感してよくわかった、同じようにつくって欲しい、と。

高橋—-当社の場合、秩父パッシブハウス(*2)で体感はしてもらえるのですが、それを説明するツールがない。ここでは、展示棟というあたたかい理由を説明できるツールがあるので、理解してもらいやすいと思います。理由を知って、このあたたかさを体験してもらうと、私の提案もよくわかってくれます 。それに、ここは空間も洗練されていてバランスもいいので、こういうふうにつくれることをわかってもらえると、話が進めやすいですね。

白石—-今回、みなさんにチームを組んでつくっていただいた「ネオマの家」は、プロトタイプとして建てましたが、一般の家づくりに十分に可能性があると思います。例えば、ここは冷暖房の効率がわかりやすいよう総2階にしていますが、ここにつまったノウハウを生かして、さまざまなプランに応用が可能です。このチームがプラットフォームになって、工務店さんの相談に応えていくとか一緒に設計するとか、この施設を利用した新しいソリューションサービスの可能性もありますね。

*2 秩父パッシブハウス—-高橋建築が設計・施工を手がけたパッシブハウス。パッシブハウスとは、ドイツのパッシブハウス研究所が規定する性能認定基準を満たす省エネ住宅のこと。
展示棟には、断熱材をはじめ高断熱・高気密住宅を学べるさまざまな展示を用意。なぜ、「ネオマの家」が心地いいのか、ここで理解を深めることができる。
展示棟には、断熱材をはじめ高断熱・高気密住宅を学べるさまざまな展示を用意。なぜ、「ネオマの家」が心地いいのか、ここで理解を深めることができる。

→快適空間ラボラトリーとは
https://akk-kaitekilab.com/wp/kaitekilab/724

あたたかい家をつくりたい方へのメッセージ

御前—-自分の家のことを理解して好きになる、ということが大切です。そのためには、なるべくローテクで単純な仕組みの家をつくる、という思想を持ったつくり手に依頼することを勧めたいです。

高橋—-家を建てるって、普通の買い物ではないので、真剣になって、相性のいい工務店や設計士さんに知り合えるまでとことん探して欲しいと思います。最近、ファッションと同じようにぱっと見のいい家をぱっと建てちゃう人が多いから。もっと悩んで一所懸命勉強してつくったほうがいいのにと思う。お施主さんも勉強が必要ですよ、と。なので、こういうところに来て体感して、勉強して建ててください。勉強するまで建てちゃだめ(笑)。

橘田—-そうは言っても、お施主さんも勉強する時間がないんですよね。時間がない中、いろいろな情報だけ揃えていっぱいいっぱいになって、わけがわからなくなって建てちゃう方も多い。それを解決する一つとして、この施設があるかと。早い時期に工務店さんにお施主さんを連れてきてもらって、一緒に楽しんで体感してもらえたらいいと思います。

白石・大塚—-旭化成建材では、引き続き、あたたかい家をつくりたい方のために、HPなどを通じて、わかりやすく情報を発信していきますので参考にしていただければと思います。

ぜひ、ネオマの家を実際に体験してください。
ぜひ、ネオマの家を実際に体験してください。

座談会参加者

白石真二<しらいし・しんじ>
旭化成建材株式会社 快適空間研究所 所長
大塚弘樹<おおつか・ひろき>
旭化成建材株式会社 快適空間研究所
御前好史<みさき・よしふみ>
一級建築士/株式会社みさき建築研究所 代表取締役
旭化成工業株式会社(現旭化成株式会社)住宅事業部から建築設計事務所を経て独立。住宅の性能とデザイン、機能性を確保しながらも、合理的な方法で様々な無駄を省く設計監理を続けている。
[株式会社みさき建築研究所] http://misakiarch.com
高橋慎吾<たかはし・しんご>
一級建築士/高橋建築株式会社 代表取締役、パッシブハウスジャパン相談役
職人が社員の技術集団の工務店の社長。自らも大工を経験し今も現場作業も行う。「寒い家は壊される」ということに気づき、壊されない長持ちする家を作るため高断熱に取り組み始め、今に至る。寒い秩父の地に有りながら無暖房で暮らせる「秩父パッシブハウス」を建築。現在はパッシブハウスレベルの建物を最低の目標と定め、暖かい省エネな家を作り続けている。
[高橋建築株式会社]http://www.ta-k.jp
 

橘田洋子<きつだ・ようこ>
デザインディレクター ・ インテリアアーキテクト/株式会社シトラス 代表取締役、駒沢女子大学 人文学部 住空間デザイン学科 特任教授
東京ガス都市生活研究所、リビングデザインセンターOZONEを経て、マンションのリノベーションデザイン、店舗・ショールーム・インテリア商品などのディレクション&インテリアデザインなどを手がけている。生活者視点のロングライフデザインを目指し活動をしている。

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