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断熱窓の選び方ーLow-Eペアガラス、トリプルガラスの違い

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断熱窓の選び方ーLow-Eペアガラス、トリプルガラスの違い

温熱環境の良い家をつくるには、壁や窓の断熱性能を高めることが必要です。

まずは、壁に断熱材をしっかりと切れ目なく入れることが大事ですが、窓の断熱性能について配慮することも必要です。

そこで今回は、断熱窓を学びます。建築家・藤江創さんに、どのような断熱窓を選び、どのように用いているかをうかがいました。

一級建築士が教える断熱窓の選び方

高断熱住宅を設計する上で窓は、日射取得と断熱性能、開口部の大きさ、そして予算、これらのバランスをとって決めていきます。まずは、日射熱を取り入れたいのか、採光なのか、通風なのかなど窓の目的を明確にし、それに応じた機能を選びます。

私が設計する家では、樹脂窓が基本です。ガラスはLow-Eペアガラスが主で、部分的にトリプルガラスを使うケースが多いですね。まず、冬のあたたかさと採光を得るために、南の開口部をできるだけ大きく取って、ガラスは日射取得型のLow-Eペアガラスにします。予算が少ない場合はふつうのペアガラスにして、外にシェードを設けるなど夏場の日射遮蔽に気をつけます。そして、東、西、北側の窓は可能な限り断熱性能の高いものを使います。特に北と西側はできるだけ開口を絞った方が、全体の温熱性能が上がるので、予算的に厳しい場合でも、サイズを小さくしてトリプルガラスを選んでいます。トリプルガラスは、重く、厚みがあって窓も厚くなるので、価格が安くなれば、軽く、薄い真空トリプルガラスを使っていきたいですね。

また、断熱窓選びで、気をつけたいことの1つに、開き戸や引き戸などの開閉形式があります。ガラスが2枚、3枚となると窓自体が重くなるので、使用頻度の高い窓や大きい窓の場合は、開け閉めのしやすさも確認が必要です。

開き戸のほうが気密性が高く、開け閉めも楽ですが、諸条件によっては引き戸の方がいい場合もあります。最近では、軽く操作できて気密性もある引き戸も登場しています。操作性や重さなど、ショールームなどで体験して決めることをお勧めします。
(ふじえ・そう談)


Q:断熱窓選びのポイントは?

A1
窓は、ガラスと障子と枠で構成され(下図)、選ぶ際には、ガラスの性能と枠・障子の素材がポイントになります。ガラスは枚数が多いほど断熱性が高く、そのガラスもLow-Eという金属膜をコーティングしたものの方が断熱性が高まります。さらに、中空層が、空気、ガス、真空の順に断熱性が高くなります。

窓の構成要素は、ガラス、枠、障子

また、Low-Eガラスを用いたものには、コーティングする面が室内側か室外側かによって、日射得型(日射熱を取り込む)と日射遮蔽型(日射熱を遮る)があるので、目的に合わせて使い分けます。

断熱性能を決めるガラスの3要素

A2
枠・障子の素材は、以前はアルミが主でしたが、アルミは熱の伝導率が高く、断熱性に劣ります。

海外では、アルミの1000倍も断熱性能のある樹脂窓が普及しており、日本でも室内側が樹脂で外側がアルミの複合タイプが開発され、現在、高断熱住宅では樹脂が主流となっています。

樹脂窓の樹脂は、耐久性のある塩化ビニル樹脂(PVC)で、身近なものではフライパンの取っ手などに用いられているものです。加工や着色がしやすいので、さまざまな開閉タイプやデザインのものが製造されています。

断熱性能を決める枠・障子の素材


健やかな暮らしのために、進化する断熱窓

ここでは、樹脂の断熱窓として定評のある「APW」シリーズ(YKK AP株式会社)をご紹介します。2009年に登場以来、さまざまなタイプが開発されています。基本はLow-E複層ガラスの「APW 330」。このシリーズには、複層ガラスと同じ厚み(ガラス総厚)の真空トリプルガラス仕様や、網目のないクリアな防火窓仕様、またデザインの幅を広げる木目仕様もあります。「APW 430」は、世界でもトップクラスの断熱性能を誇るトリプルガラスのシリーズ。ツーアクション窓や大開口スライディングなどバリエーションも豊富です。

Low-E複層ガラス樹脂窓

Low-E複層ガラスを用いた樹脂窓「APW 330」。中空層はガス入りかガス無し、ガラス間のスペーサーにはアルミか樹脂が選べる。

APW330

トリプルガラス樹脂窓

両側の2枚にLow-Eガラスを用い、中空層には断熱効果の高いアルゴンガスを封入、スペーサーにも樹脂を用いている「APW 430」(日射遮蔽型)。

APW430

フレームがスリムな「APW 330」の木目仕様、片上げ下げ窓。特殊な表面加工で天然木に近い質感を実現。ブラックウォールナット色(写真)とチーク色がある。

APW330木目

トリプルガラスの大開口スライディング樹脂窓「APW 431」。
APW431

重いトリプルガラスも、子どもから高齢者まで握りやすい形状と長さ(180ミリ)の戸先錠付サポートハンドルで、スムースに開閉できる。

APW431

YKK AP 株式会社
0120-20-4134 http://www.ykkap.co.jp/
解説/藤江 創(一級建築士・有限会社アーバン・ファクトリー代表)
https://www.urbanf-arch.com

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