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ラジエーターを使った冷暖房システム「放射冷暖房」の仕組みと特徴

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ラジエーターを使った冷暖房システム「放射冷暖房」の仕組みと特徴

放射冷暖房システム

あまり聞き慣れない言葉ですが、「放射」は私たちの周りでたくさん起こっている熱の伝わり方のひとつ。

その仕組みを利用したものが、放射冷暖房システムです。おだやかにあたためる(冷やす)ので、身体にやさしいなど、たくさんの利点がある冷暖房システムです。

誰でも知っている”日なたぼっこ”のあたたかさ。外気は冷たいのに、太陽光が当たっているところだけあたたかく感じるのは、熱の性質によるものです。3つある熱の伝わり方(「放射、伝導、対流。3つの熱の伝わり方を簡単に解説」参照)のうち、空気の無い状態でも電磁波という形で熱が伝わる「放射(輻射)」という現象が起こっていて、太陽光が当たっている物をあたため、その熱が人に伝わってあたたかさを感じているのです。

この仕組みを利用して室内の温熱環境を整える装置が放射冷暖房システムです。暖房用のラジエータ(放熱する装置)として、ヨーロッパで150年以上前に発明されました。1カ所で蒸気や温水をつくり、パイプで各部屋に設置したラジエータに送り込み、そこから熱を放射させる方法です。

日本では、家庭用は1970年頃よりヨーロッパから輸入や技術導入が始まり、住宅で使用されるようになったのは、寒さが厳しく温熱環境に対する意識の高い北海道から。1990年代になって、夏も厳しい日本の気候に対応するため、暖房も冷房もひとつの設備で行えるタイプが開発されると全国的に広がり始めました。内部に冷温水が流れるラジエータからの放射によって、おだやかに冷暖房するので、自然な快適さを得ることができる設備として支持されています。初期費用はかかりますが、省エネにつながる点も特徴です。取り入れる上では、建物を高断熱高気密にすることが大切で、それによりいっそう効果が発揮されます。

放射冷暖房システム

放射冷暖房システムの仕組み

放射冷暖房システムは主に、各部屋に設置する「ラジエータ」と冷温水をつくる「室外機」、それらをつなぐ「パイプ」から構成されます。ラジエータは金属製と樹脂製があり、室外機はエアコンと同様でヒートポンプ式のものです。

放射冷暖房システムの仕組み

冬:室外機であたためられた温水が各部屋のラジエータに送られます。ラジエータから放射される熱で室内をあたためます。

夏:室外機で冷やされた冷水が各部屋のラジエータに送られます。冷放射(冷水が室内気の熱を奪う)によって室温を下げます。

放射冷暖房システムのメリットは3つ

1:各部屋に設置されたラジエータからの放射で、空間全体をあたためて(冷やして) 安定した室温に保つので、自然な室内環境が得られます。急激な温度差で起こるヒートショックの危険を回避することにもつながります。

2:エアコンやファンヒーターのような冷温風を感じることなく、体感がとても自然です。空気中のホコリやカビなどを巻き上げず、ストレスになるようなニオイや音も発しません。

3:基本的にシーズン中は連続運転するものなので、最も電力を使用する立ち上がりの回数が減ることで消費電力が抑えられ、省エネに。初期費用はエアコンなどに比べて高額になりますが、ランニングコストは抑えられます。

設置方法と設計の3つのポイント

1:ラジエータと室外機の設置とそれらをつなぐパイプなどの設備工事が必要となります。

2:新築はもちろんリフォームでも設置可能ですが、放射冷暖房の効果を存分に発揮させるには、設計・施工で建物の断熱性能、気密性能をしっかり高めることが必要不可欠です。せっかくの熱を逃がさないようにします。

3:ラジエータの前に家具などの物を置くと放射の邪魔となり、効率が悪くなります。な ので、ブランニングでは、効率のいいラジエータの設置場所を考慮しましょう。また、ラジエータは、空間を有効に使い、効率よく冷暖房するために上下に長いものが効果的です。

放射冷暖房システムの製品例

より自然な心地よさをつくり出すラジエータ

パーティションを兼ねた使い方も効果的。広い空間も快適に活動できる環境をつくる。

スイスの企業と提携し、1969年より暖房用ラジエータの製造販売をスタート。さらに1992年には世界で初めて冷房と暖房をひとつの設備で行う除湿型冷暖房「PS HR-C」を発売しました。自然を感じられる室内環境をつくることが同社のポリシーです。金属製の放射パネルは標準で51 色、様々なインテリアに合うようにデザイン面も配慮されています。

ピーエス株式会社
☎︎:03-3485-8189
URL:https://ps-group.co.jp

軽量で腐食に強い、樹脂製ラジエータ

ラジエータは、白と黒の2色。壁に同化させたり、あえて見せたり、インテリアに合わせて楽しむこともできる。width=

北海道を拠点とするテスクは、同社が特許をもつ外断熱工法をより普及・活用するため、高断熱の室内環境を整える手法として、樹脂製ラジエータによる放射冷暖房 「クール暖」を開発しました。金属に比べて熱を伝えにくい樹脂ですが、「クール暖」の表面には微細な凸凹があり、放熱量は金属とほぼ同じ。軽量で、腐食や湿気に強いこと、表面は高温になりにくく、やわらかいといった点がメリットです。

株式会社 テスク
☎︎:011-611-6650
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