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自然な心地よさをもたらす通風。風通しのよい家の設計のポイント

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自然な心地よさをもたらす通風。風通しのよい家の設計のポイント

住まいの熱環境について取り上げる連載、今回は「通風」です。自然な心地よさをもたらす通風についての基本を学びます。

LECTURE 01 通風の目的と効果

「採涼」と「排熱」を促し、自然な心地よさを得る

夏を旨とした昔の日本の住まい。家づくりの技術が向上し、環境や気候も大きく変化した現代では、夏の暑さへの対処方法も変わりました。年々、暑さが厳しくなる日本の夏では、通風だけで過ごせる地域は限られ、エアコンによる冷房は欠かせないものとなっています。一年を通しても、暖房・冷房・除湿などの空調設備を使わずに過ごせる期間はほんの一割程度です。そこで、これまでこの連載で学んできた「断熱」「気密」「換気」「日射取得・遮蔽」「温湿度調整」をしっかり施して、建物の温熱環境を整えた上で、通風を行うことが大切です。ここで改めて、通風について基礎を学んでいきましょう。

通風の目的は、外部からの風で涼を採り、室内のこもった熱を排出して室温を下げることです。自然風による採涼は、身体にもやさしく、風速0.5~1.0m/秒くらいのそよ風で体感温度は下がります。通風で涼を得ることができれば、省エネにもつながります。

また、通風によって室内の換気も促されます。現在の住宅では、24時間機械換気システムが義務付けられていますが、窓を開けて通風することで、より大量の空気の入れ替えが期待できます。

「採涼」と「排熱」

LECTURE 02 周辺の環境に左右される通風

基本を押さえた通風計画を、設計段階で

実際のところ、快適な通風を得るのはとても難しいことです。なぜなら、通風は周辺の環境に大きく左右されるからです。

敷地に余裕があり、周辺に大きな建物がなく、地面も土で緑もあるような場所であれば、その地域の風の吹き方にそった設計によって、心地よい風が得られます。しかしながら、都市の密集地はもちろん郊外の住宅街でもなかなかそのような好立地は望めないのが現状でしょう。

そこで、周辺環境を読み解いた上で、基本を押さえた通風計画を設計段階でしておくことが大切になります。

周辺の環境に左右される通風

LECTURE 03 風をうまく通す方法は?

1 窓の配置で、風通しのいい間取りに

通風には、風の入口と出口が必要で、窓の配置がポイントとなります。基本的には、各部屋に方位の異なる2面の窓を、対面に配置すると効果的です。

窓の配置で、風通しのいい間取りに

▲図:通風には風の入口と出口を確保することが必要です。基本としては、各部屋ごとに2面の開口を対面で配置します。

2 風の圧力差を利用する

外で風が吹いている場合は、風が建物に当たることによって生じる圧力差を利用して、室内に風を取り入れることが可能です。風は圧力の高い方から低い方へ流れます。風が建物に当たると、風上側の圧力が高くなり、風下側の圧力が低くなるので、その圧力差で風を通すというわけです。風上側の窓を風の入口に、風下側の窓を風の出口として開けると、通風が促されます。

風の圧力差を利用する
▲図:風がある場合は、風の圧力差を利用した通風が可能です。風上側の 窓を風の入口に、風下側の窓を風の出口として開けて風を通します。

3 温度差による上昇気流を利用する

風の入口と出口の高さを変えることによっても、風通しを促すことができます。暖かい空気は上昇するという空気の特性を利用するのです。建物の下の階と上の階の、高低差のある窓を2面開けておくと、自然と下から上への空気の流れが生じ、上部へと昇っていって窓から出ていきます。上下の窓の高低差が大きいほど、窓が大きいほど、よく風が通ります。

温度差による上昇気流を利用する

▲図:上昇気流を利用した通風が可能。建物の低い方の窓を風の入口に、高い方の窓を出口として開けて風を通します。

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